『般若心経』は「日本で最も人気のあるお経」と言われています。
『般若心経』の作者は不明ですが、「三蔵法師」としてよく知られる玄奘三蔵がインドから持ち帰り、漢訳したものが広く読まれています。
この記事では、262文字の短いお経『般若心経』の全文(ふりがな付き、縦書き)と、その意味をご紹介します。
般若心経 全文
こちらが、般若心経の全文です。
以下の般若心経の漢字は、小河隆宣『お守り 般若心経』を参考にしています。
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佛説 摩訶般若波羅密多心経 観自在菩薩 行深般若波羅密多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄 舎利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色 受想行識 亦復如是 舎利子 是諸法空相 不生不滅 不垢不浄 不増不減 是故空中 無色無受想行識 無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法 無眼界 乃至無意識界 無無明亦 無無明盡 乃至無老死 亦無老死盡 無苦集滅道 無智亦無得 以無所得故 菩提薩埵 依般若波羅蜜多故 心無罣礙 無罣礙故 無有恐怖 遠離一切顛倒夢想 究竟涅槃 三世諸仏 依般若波羅蜜多故 得阿耨多羅三藐三菩提 故知般若波羅蜜多 是大神呪 是大明呪 是無上呪 是無等等呪 能除一切苦真実不虚 故説般若波羅蜜多呪 即説呪曰 掲諦掲諦 波羅掲諦 波羅僧掲諦 菩提薩婆訶 般若心経 |
スクロールしても見づらいという方は、こちらの『お守り 般若心経』もあわせてご参照ください。
般若心経 全文の意味
般若心経 全文の簡単な意味(現代語訳)です。参考にした書籍は、下に記載しています。
観音様が、深遠なる「智慧の完成」の修行をしていたとき、
この世のすべてが「空」である(実体がない)ことを悟り、
一切の苦悩から解放された。
舎利子よ、
「物質」は「空」と別物ではなく(色不異空)、
「空」は「物質」と別物ではない(空不異色)。
「物質」はすなわち「空」であり(色即是空)、
「空」はすなわち「物質」である(空即是色)。
感じること、想うこと、判断すること、認識すること、
これらについても同じことが言える。
舎利子よ、
この世に存在するあらゆるものが「空」なのだ。
それらは生まれることもなく、滅することもない。
汚れることもなく、清らかになることもない。
増えることもなく、減ることもない。
ゆえに、この「空」の世界においては、物質は無く、
感じること、想うこと、判断すること、認識すること、
これらの精神作用も無い。
眼も、耳も、鼻も、舌も、身体も、意識も無い。
色も、音も、匂いも、味も、感触も、意識の対象も無い。
眼で見る世界から、意識の世界まで、
そのすべてが無いのだ。
無明もなく、無明が尽きることも無い。
老いや死もなく、老いや死がなくなることも無い。
「人生が苦である」という真理(苦諦)も、
「苦の原因は煩悩である」という真理(集諦)も、
「煩悩をなくせば苦が消滅する」という真理(滅諦)も、
「煩悩をなくす道(修行法)がある」という真理(道諦)も無い。
知も無く、得るものも無い。
そもそも得るということが無い。
菩薩は、「智慧の完成」の修行をしているがゆえに、
心にこだわりが無く、こだわりが無いゆえに、恐れも無い。
倒錯した認識の世界から遠く離れ、涅槃の境地に達している。
三世(過去、現在、未来)のすべての仏は、
この「智慧の完成」の修行により、完全な悟りに達したのだ。
ゆえに知るべきである。
「智慧の完成」は大いなる神秘的な真言であり、
大いなる知の真言であり、
この上ない真言であり、
比類なき真言である。
一切の苦しみを取り除き、
真実であり、偽りのないものである。
ゆえに、その「智慧の完成」の呪文を説こう。すなわち次の通り。
ギャーテイ ギャーテイ ハーラーギャーテイ
ハラソウギャーテイ ボウジソワカ
これが、般若心経である。
参考文献
- 飲茶『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』河出書房新社(2016)
- 佐々木閑『NHK「100分de名著」ブックス 般若心経』NHK出版(2014)
- 加藤朝胤(監修)『ラク~に生きるヒントが見つかる 般ニャ心経』リベラル社(2014)
まとめ
今回は、般若心経 全文とその意味をご紹介しました。
般若心経の最後にある「薩婆訶」は、「幸あれ」とよく訳されます。
何かに困ったとき、壁にぶち当たったとき、苦しいとき、悲しいとき。
ふとした瞬間に、お気に入りの歌のサビを口ずさむような、そんな軽やかな感じでいいと思います。
「掲諦掲諦 波羅掲諦 波羅僧掲諦 菩提薩婆訶」
このように声に出してみると、気分も少し変わるかもしれません。
皆さんに、幸あれ。