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「オカメ桜」の名前の由来とチェリー・イングラムの話

エッセイ
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「梅の花を見に行く」というのは、私の中では優先度の高いイベントでした。

花見といえば桜というイメージがありますが、少し寒い空気感の中で見る梅の花が好きでした。

2月後半に入ったあたりから「そろそろ梅が咲く時期だなぁ」と頭の片隅で考え始めて、3月中旬の今頃になると「しまった、梅の見頃が終わってしまう!」と焦り始めるのが毎年の流れです。

今日はそんな焦りもあって、梅の花が見られるという近所の公園に散歩がてら行ってみることにしました。

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公園で見つけた「オカメ桜」

公園を散策していると、遠くの方にピンク色をした木があるのが目に入りました。「あれかな?」と思って、その場所を目指して歩きます。

そこは、綺麗なピンク色の花をつけた木が数本並ぶ、少しひらけた場所でした。

「梅の花を見に行こう!」と意気込んで公園に来たものの、実は私は、花を見ただけではそれが梅か桜かどうかの区別がつきません。

果たしてこれは梅なのか? でも、桜にしては時期がまだ早いんじゃないかな……?

そう思いながら歩いていると、その花の名前が書かれたネームプレートを発見し、ピンク色の花の正体を確認しました。

「オカメ桜」

梅じゃなくて桜か~と思いつつも、「オカメ桜」という名前に興味を持ちました。

オカメって、あの「おかめ」のことかな?と、白塗りの女性のお面を思い浮かべながら、咲いている花を上から見上げてみます。

オカメ桜(自分で撮影)

オカメ桜は、一般的にイメージする桜よりも濃いピンク色をしています。調べてみると、こういうのを「淡い紅色」と表現するそうです。

花は小振りで下向きについており、中心から出ている雌しべ、雄しべとよく目が合いました。

淡い紅色をした、小振りでうつむきがちな早咲きの桜。

そう聞くとなんとなく、「オカメ桜」という名前がぴったりのような気がします。

「オカメ桜」の名前の由来

で「オカメ桜」についてWikipediaで調べてみると、次のように書かれていました。

オカメザクラ(オカメ、Prunus incamp cv. Okame)はバラ科サクラ属の落葉小低木でサクラの園芸品種である。

淡い紅色の一重咲き。花が下を向いているのが特徴である。早咲きで花期は2月下旬から3月上旬ごろ。地域によるがソメイヨシノより早くに開花する。

オカメザクラ – Wikipedia

上の説明にある「一重咲ひとえざき」とは、花弁が重なり合っていない状態のことらしく、逆に幾重にも重なっている状態を「八重咲やえざき」と呼ぶそうです。

意外なことに、オカメ桜はイギリス生まれの植物だそうです。つまり、外国から来た品種(外国産)ということになります。

イギリスの桜研究者・コリングウッド・”チェリー”・イングラム(Collingwood “Cherry” Ingram)が、カンヒザクラ(台湾桜)とマメザクラ(富士桜)を交配し、オカメ桜を作ったとのこと。

海外のサイトに、次のような説明がありました1

Ingram named his creation Okame, after a Japanese goddess of good fortune and mirth. Its flowers bloomed each March, at the midpoint between the blossoming of the Taiwan and Fuji cherries. Each tree was bedecked in countless little petals, like stars in the night sky. Each bloom was tiny and delicate, taking after the maternal Fuji cherry. But each was also tinted a light pink by the mix of the two parents’ shades. Better still, the sepals that supported the petals were a deep vibrant pink. Ingram said the flower would ‘be appreciated by all who have an eye for elegance of form and unpretentious beauty.’ He was ecstatic. ‘The offspring of this union has more than fulfilled my expectations,’ he wrote.

Mystery of Okame origin solved | U.S. Japanese Gardens

イングラム氏は自分の作品を、日本の福徳と陽気の女神にちなんで「オカメ」と名付けました。 その花は毎年3月、タイワンザクラとフジザクラの中間時期に咲きました。 それぞれの木は、夜空の星のように、無数の小さな花びらで飾られていました。 どの花も小さく繊細で、母系のフジザクラをに似ていました。 しかし、それぞれの花の色は、両親の色合いが混ざり合って淡いピンク色に染まっていました。 さらに、花びらを支えるがく片は濃い鮮やかなピンク色でした。 イングラム氏は、この花は「エレガントな形と飾り気のない美しさに目を向ける全ての人に喜ばれるだろう」と述べて、大喜びしました。 「この組み合わせから生まれた花は私の期待に十分に応えてくれた」と彼は書いています。

イングラム氏はこの花について「エレガントな形と飾り気のない美しさに目を向ける全ての人に喜ばれるだろう」と言っていたそうです。

今と昔では「おかめ」という言葉に対する印象は違うかと思いますが、イングラム氏にとっては「日本の古風な女性」というイメージがあったのかもしれません。

イングラム氏の「飾り気のない美しさ」という言葉にちなんでか、オカメ桜の花言葉はしとやか、高尚」だそうです。

参考
早咲きの「おかめ桜」とは?京都・出町柳の長徳寺で人気急上昇中の桜 – MKメディア
根府川おかめ桜まつり| リトルトリップ小田原 [小田原市観光協会]
オカメザクラ – 庭木図鑑 植木ペディア

まとめ

もともとは少し散歩がてらに梅を見に行く予定が、偶然出会った「オカメ桜」をきっかけに、その名前の由来や桜研究家・イングラム氏について調べることになるとは思ってもいませんでした。

「オカメ桜」という名前を知ったのは今回が初めてでしたが、きっとこれまでに何回も春が訪れる度に目にしたことがあったのではと思います。

今日はいい勉強になったなと、心地よい疲労感と満足感に浸りつつ、でも何か大切なことを忘れているような……。

あ、梅の花見れてない!笑

えのきつね
えのきつね

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
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注釈

  1. こちらの文章は、以下の書籍からの引用となっています。
    Naoko Abe (2020) “‘Cherry’ Ingram: The Englishman Who Saved Japan’s Blossoms” ↩︎
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