日々の生活での「悩み」というのは、考え出すとキリがありません。
- 仕事でストレスが溜まっている
- 職場の人間関係がめんどくさい
- 今のままでは将来が不安
特に、仕事や人間関係の悩みは自分でどうすることもできない場合もあり、我慢してストレスが溜まることも少なくありません。
しかし、それはもしかしたら、物事を深く「考えすぎている」ことが原因かもしれません。
『小さな悟り』の著者・枡野俊明先生は、現代人は何事も「考えすぎている」と感じると仰っています。
物事をわざわざ複雑に捉えて、悩みの深みにはまっていくところがあるのです。結果、「終始考え事ばかりして、何も行動できない人」になってしまわないとも限りません。
枡野俊明『小さな悟り』P.4
たしかに、最近はSNSやYouTubeなどを通じて、毎日膨大な量の情報に触れる生活が当たり前になってきました。
その結果、「今すぐこうすべきだ」「これをやらないと損する」といった文句に振り回されたり、他人と自分を比較して自己嫌悪に陥ったりと、余計な情報に悩まされる場面も多くあります。
そんなときにこそ、枡野先生が「小さな悟り」と呼んでいる考え方が重要となってきます。
余計な考え・迷い・情報を取り除いて、
枡野俊明『小さな悟り』カバー
限りなくシンプルに考え、行動する——。
そのために、ちょっとものの見方を変える。
ちょっと発想を変える——。
それが「小さな悟り」です。
「悟り」と聞くと、難しいようにも感じられますが、この「小さな悟り」というのは「日々の生活における気づき」といったニュアンスで使われています。
本書では、人生に悩んだときや疲れたとき、困ったときに役立つ「小さな悟り」が99の言葉とともに紹介されています。
今回は、本書で紹介されている「小さな悟り」の中から、個人的に印象に残っている内容をピックアップしてまとめてみました。
他人と比較せず、等身大の自分を生きる
「自分を他人と比較しない方がいい」とは頭では分かっているものの、ついついやってしまうのが人間の性というもの。
これについて枡野先生は、他人と比較しなければ、そこには「あるがままの自分」がいるだけ。何も嫌悪するほどのことではない、と仰っています。そして、その理由を次のように説明しています。
なぜなら、自分を測る”物差し”が元来、万人の価値を決めるほど正確にして絶対的なものではないからです。たとえうまくいかないことがあったとしても、それによって自分自身の価値が上がったり、下がったりすることはありません。
枡野俊明『小さな悟り』P.75
たしかに、他人と自分を比較した際に用いられる”物差し”はあくまで「相対的な評価」であり、そこには思い込みや先入観などが含まれています。
SNSでも、充実した生活をしている人を羨ましく思う一方で、それに対抗して自分でも自慢話を書き込んだりして、「自分の中の価値観」が揺らいでしまう場面も多くあると思います。
そんな状況に対して、枡野先生は次のように語ります。
人生の舞台はSNSではないのですから、等身大の自分自身を出せばいい。それが自分を大切にする賢い生き方というものです。
枡野俊明『小さな悟り』P.73
見栄を張らず、等身大の自分を見失わないようにする。SNSの舞台から降りて、自分らしい歩き方で前に進んでいく。
そして大切なのは、絶対に自分を嫌わないこと。そのために、人と比べないようにすることであると、枡野先生は書かれています。
そもそも自分で自分を嫌って、どうするのですか。それほどみじめなことはありません。自分を一番好きになってあげられるのは、自分自身なのですから。
枡野俊明『小さな悟り』P.75
あなたのことを、いつでもどこでも、いつまでもどこまでも、ずっと好きでいてくれるのは、あなた自身です。
自分を好きになるのは、自分を嫌いになるよりも難しいことかもしれません。
それでも、自分のために、まずは自分自身を愛してあげてください。
“一人舞台”から降りて、ゆとりを持つ
仕事を一人でこなせるようになると、これまでよりも自分の業績や効率を優先したいという気持ちが出てきます。
しかし、「自分さえよければそれでいい」と周りの人を無視して動いてしまうと、あるところで物事がうまく回らなくなってしまうかもしれません。
このような仕事の場面において、枡野先生は次のように仰っています。
そこに目を向けて、そろそろ”一人舞台”はやめにしませんか?「周りのみんなのおかげでいい仕事ができる」と感謝すればこそ、協力者がいっそう増え、自然と自分の成績も上がっていく。仕事とは、そういうものなのです。
枡野俊明『小さな悟り』P.111
一人で仕事をしていると、いつか限界が訪れます。その中で、仕事ぶりに共感し、協力してくれる人が増えると、より大きな仕事に挑戦できるようになります。
この「一人舞台から降りること」に加えて、時間に「ゆとり」を持つことも、仕事をする上で重要になってきます。
たまに「最近ぜんぜん寝てないわ」といった”忙しい自慢”をする人がいますが、枡野先生はこれを「時間に使われている——”時間の奴隷”になっているも同然」と仰っています。
時間というのは、自分が主体となって行動し、有意義に使い切るものです。スケジュールを立てて、そのとおりにこなすのも、自分が主体となっているようでいてじつは違います。時間に追われることにほかならないからです。ゆとりを持たせたスケジュールの中で、「自由に」行動するのが、時間を使うことのできる人といえます。
枡野俊明『小さな悟り』P.111
時間に使われる生き方ではなく、時間を主体的に使う生き方でありたい。それが「自由に」行動することだと、枡野先生は仰っています。
自分が仕事に慣れてきたら、次は視点を周りへと広げてみる。そして、具体的な作業から時間の使い方を意識していく。
このように徐々に視野を広げていくことで、自分の中の「ゆとり」も広がっていくのかもしれません。
人生は、やれるだけのことをやればいい
枡野先生は、どういうときに、心に心配が生じるかについて、2つの場合を示しています。
一つは、先の予測が立たないとき。どうなるかわからないために、目の前にあるやるべきことに手がつかないくらい、心配してしまうのです。いうなれば、「心配するために心配している」状態です。
枡野俊明『小さな悟り』P.197
人間の性質上、先が見えない状況では、心配や不安が生じるのは当然のことです。
しかし、いくら考えても未来のことはわかりません。そのため、未来のことを心配するのは、ある意味で「ムダなこと」と言えるかもしれません。
これについて枡野先生は、漠然と心配するのではなく、どうなると困ったことになるかを具体的に考えて、一つひとつ手を打っていくしかないとの具体的なアドバイスをされています。
これに加えて、心に心配が生じるもう一つの場合とは、やるべきことをさぼったり、準備が十分でなかったときだと枡野先生は仰っています。この場合は、今からでもやるべきことをやるしかありません。
このように、ただ不安を抱えて心配するというだけでなく、今できることを今すぐにやることが重要です。そうすることで、「いま」を受け入れられる状態になります。
そんなふうに”心配の種”をつぶしていくと、「なるようになるさ」という気持ちになります。やるだけのことをやったという安心感を持って、先がどうなろうと、それを迎え入れることができるようになるのです。
枡野俊明『小さな悟り』P.197
ここまでの話をまとめた枡野先生のお言葉が、次の通りです。
やれるだけのことを、やる——人生というのは、それでいいのです。
迷ったり、不安や心配を抱いたときは、「いま」を大切にして、やるべきことをやる。
この小さな実践の積み重ねが、心の安定を得た人生へと近づいていくのかもしれません。
『小さな悟り』を読んだ感想・レビュー
私は、本書の帯に書かれている次の文章がとても好きです。
「雨が降ってきたから傘をさす」
枡野俊明『小さな悟り』帯
それくらいシンプルに考え、行動する
ふと、心が晴れる99の言葉
もともと私は雨が大嫌いでしたが、今は嫌いというほどでもありません。そもそも、雨が好きか嫌いかを考えることすらなくなりました。
雨が降っているのを、ただ「降雨」という物理現象として捉えることができたというこの経験も、私は勝手に「小さな悟り」と呼ばせていただいています笑
これと同じくらい、どうでもいいことは何も考えずに、大事なことはしっかりと(ゆとりを持って)考えて行動できるようになれたら、というのが現在の目標です。
本記事の冒頭で、枡野先生が「現代人は何事も考えすぎるような気がする」と書かれているのをご紹介しましたが、その続きとして、以下の文章が書かれています。
「深く、ややこしく考えるから、動けなくなる」わけです。
枡野俊明『小さな悟り』P.4
別の言い方をすると、「物事はなるようになるという小さな悟りがあれば、考えるまでもなく行動できる。いまに集中して、やるべきことをやれる」ということです。
今の時代は、将来の予測が困難な時代(VUCA)であると言われています。しかし、そんな状況だからこそ、遠くに目を向けるのではなく、「いまこの瞬間」を大切にしなければなりません。
本書は、そういった「ちょっとした気づき」を与えてくれる、人生の先輩のような本です。すこしでも親しみを感じた方は、ぜひ一度手に取ってみてください。
まとめ
今回は、枡野俊明先生の書かれた『小さな悟り』の書評(感想・レビュー)を書いてきました。
いろいろと悩みの尽きない時代ではありますが、本書を読むことで少し気持ちが軽くなるかもしれません。
本ブログでは、他にも仏教に関する記事を執筆しています。もしお時間があれば覗いてみてください。
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