私たちの人生は、さまざまな逆境やストレスに満ちています。
時には思いもかけない問題が発生し、どう対処すればいいか分からなくなることもあります。
そんな中で「レジリエンス(回復力)」という言葉を耳にしたことはありませんか?レジリエンスとは、困難に直面したときに柔軟に適応し、立ち直る力のことです。
しかし、「レジリエンス」とは具体的に何を指しているのか、そしてどのように自分自身のレジリエンスを高めるのかについては、はっきりと理解していない方も多いと思います。
そこで今回は、「レジリエンス」の基本について学び、さらにその理解を深めるための書籍を3冊ご紹介します。
レジリエンスとは
「レジリエンス」とは、「心のしなやかさ」を意味する心理学用語です。
より詳しく説明すると、「逆境やトラブルを乗り越えたり、強いストレスに対処することができる精神力」のことを指します。
レジリエンスを構築する方法として、アメリカ心理学会は以下の「レジリエンスを築く10の方法」を提唱しています1。
- 親戚や友人らと良好な関係を維持する
- 危機やストレスに満ちた出来事でも、それを耐え難い問題として見ないようにする
- 変えられない状況を受容する
- 現実的な目標を立て、それに向かって進む
- 不利な状況であっても、決断し行動する
- 損失を出した闘いの後には、自己発見の機会を探す
- 自信を深める
- 長期的な視点を保ち、より広範な状況でストレスの多い出来事を検討する
- 希望的な見通しを維持し、良いことを期待し、希望を視覚化する
- 心と体をケアし、定期的に運動し、己のニーズと気持ちに注意を払う
レジリエンスの別名
レジリエンスを指す言葉には、「回復力」以外にもいろいろあります。
心理学における「レジリエンス」は、以下のような名前で呼ばれることもあります。
- 復元力
- 再起力
- 精神的回復力
- 心のしなやかさ
- 心の弾力性
- 心の自然治癒力
- 心の筋肉
それ以外にも、「耐久力」や「ストレス耐性」などと同じ意味で使われることもあります。
レジリエンスという言葉の歴史
「レジリエンス(resilience)」という言葉の語源は、ラテン語で「跳ね返る」という意味の「resilire」や「resilio」であると言われています。
科学分野では、哲学者・科学者のフランシス・ベーコンが1625年に出版した本で初めて「resilience」という単語を用いたことが確認されています。また、力学分野で最初に使用されたのは、1858年のことです。
一方で、心理学の分野で「resilience」が使われ始めたのは1950年代からであり、1980年代後半から多用されるようになりました。
1990年代からは、社会学や生態学の分野でも使用されるようになり、現在ではビジネスの現場でもよく耳にするようになりました。
「レジリエンス」の語源の詳細については、以下の記事をご参照ください。
レジリエンスを学ぶオススメの3冊
レジリエンスを初めて学ぶという方には、以下の3冊がオススメです。
- 『レジリエンス入門 折れない心のつくり方』
- 『世界のエリートがIQ・学歴よりも重視! 「レジリエンス」の鍛え方』
- 『レジリエンスの教科書 逆境をはね返す世界最強トレーニング』
それぞれ詳しくご紹介します。
『レジリエンス入門 折れない心のつくり方』
『レジリエンス入門 折れない心のつくり方』は、主に中高生向けに書かれたレジリエンスの入門書です。
「レジリエンス」という考え方に初めて触れるという方にオススメの本です。
本書は、実際に私が初めて「レジリエンス」の考え方を学んだ本です。
著者がプロコーチであるため、レジリエンスの考え方だけでなく、レジリエンスを高める方法も紹介されています。
また本書では、レジリエンスの理論の土台となる「エリスのABC理論」について、非常にわかりやすく解説されています。
「ABC理論」とは、心理学者のアルバート・エリスが提唱した理論のことです。
この理論では、人間の「気分や感情(C)」は「出来事(A)」によって生み出されるのではなく、その人が「出来事(A)をどのように解釈するか(B)」というフィルターを通して「気分や感情(C)」が生まれると考えます。
この説明だけではわかりにくいかもしれませんが、本書では丁寧に説明されているので安心してください。
私たちは自分の身に降りかかる出来事を選ぶことはできません。でも、その出来事をどうとらえ、どう対処するかは自分で選べます。そして、その解釈と行動が、その後の人生を決定していくのです。出来事なんかに翻弄されている暇はありません。
内田和俊『レジリエンス入門 折れない心のつくり方』P.195
学生の方、そして「レジリエンス」に興味のある方は、ぜひ本書から読み始めてみてください。
『世界のエリートがIQ・学歴よりも重視! 「レジリエンス」の鍛え方』
『世界のエリートがIQ・学歴よりも重視! 「レジリエンス」の鍛え方』は、主にビジネスパーソンを対象とするレジリエンス・トレーニングに関する本です。
仕事で伸び悩んでいる方、上昇志向の高い方にオススメの一冊です。
本書では、レジリエンスを鍛える「第四の技術」として「自分の『強み』を生かす方法」が詳しく紹介されています。
特に、以下の3つの「強み診断ツール」について触れられています。
- VIA-IS
- ストレングス・ファインダー
- Realise 2
この中で、著者の久世氏がオススメしているのが、無料で診断できる「VIA-IS」です。
自分の強みを発見し、それを最大限に生かすことが、逆境を乗り越えるための「レジリエンス強化」につながります。
自分を特徴づける強みを最大限に発揮できる土俵で戦うこと、これこそが長期的な成功の秘訣だと思います。そして自分に与えられた強みをフルに活用できる新しい仕事に挑戦する人には、必ず充実した未来が待ち受けていると私は信じています。
久世浩司『世界のエリートがIQ・学歴よりも重視! 「レジリエンス」の鍛え方』P.164
「VIA-IS」のやり方は、以下のサイトで詳しく説明されています。ご参考までに。
『レジリエンスの教科書 逆境をはね返す世界最強トレーニング』
『レジリエンスの教科書 逆境をはね返す世界最強トレーニング』は、レジリエンスについて専門的な知識を得たい方にオススメです。
本書は、2002年に刊行された「The Resilience Factor: 7 Keys to Finding Your Inner Strength and Overcoming Life’s Hurdles(レジリエンス・ファクター:内なる強さを見つけ、人生の難関を乗り越えるための7つの鍵)」の邦訳書です。
本書に登場する「QRテスト(レジリエンス指数を測定するテスト)」に回答することで、以下の7つの能力を測定することができます。
- 感情調整力
- 衝動調整力
- 共感力
- 楽観力
- 原因分析力
- 自己効力感
- リーチアウト力
本書を読むことで、それぞれの能力を向上する方法を具体的に知ることができます。
訳者あとがきにて、翻訳者の宇野カオリ氏は次のように語っています。
本書は、PRPのエッセンスとして織り込まれているレジリエンスの哲学と実践について、ビジネス書的タッチでわかりやすく網羅した一冊であり、世界中のレジリエンスの研修現場で必読書となっている。
カレン・ライビッチ、アンドリュー・シャテー『レジリエンスの教科書 逆境をはね返す世界最強トレーニング』P.379
PRPというのは、「ペン・レジリエンシー・プログラム(THe Penn Resiliency Program)」というレジリエンスの実践トレーニングのことです。
本書には具体的な事例が多く紹介されているため、多少の読みにくさはありますが、「RQテスト」で自分のレジリエンス指数を客観的に評価し、自分を見つめ直すにはちょうど良いテキストだと思います。
レジリエンスについてより深く学びたいという方は、ぜひ手に取ってみてください。
まとめ
今回は、「レジリエンス」を学ぶのにオススメの3冊をご紹介しました。
レジリエンスは、生まれつきの能力ではありません。誰でも意識的に取り組むことで、「心のしなやかさ」を高めていくことができます。
今回紹介した書籍で「レジリエンス」について学ぶことは、私たちが求めているゴールではありません。
レジリエンスの知識をどのように自分の人生に生かしていくか、という視点が重要です。
ぜひ本を手に取って行動を起こし、自分自身の「心のしなやかさ」を育ててみてください。
- Wikipedia「レジリエンス (心理学)」を参照。アメリカ心理学会「レジリエンスを築く10の方法」の原文はこちら。 ↩︎