漫画好きなら一通りはチェックしておきたい、宝島社が発行するムック本『このマンガがすごい!』。
選考対象は、2021年10月1日~2022年9月30日に単行本が発売された漫画(宝島社刊行の作品は対象外)で、ランキングが「オトコ編」と「オンナ編」に別れているのが特徴。
今回は、『このマンガがすごい!2023』ランキングのオンナ編の第1巻を読んで、その感想をまとめました。
- 『このマンガがすごい!2023』 オンナ編 ランキング一覧
- 『このマンガがすごい!2023』 オンナ編 第1巻レビュー
- 第1位 『天幕のジャードゥーガル』 トマトスープ(秋田書店)
- 第2位 『ジーンブライド』 高野ひと深(祥伝社)
- 第3位 『まじめな会社員』 冬野梅子(講談社)
- 第4位 『女の子がいる場所は』 やまじえびね(KADOKAWA)
- 第5位 『星旅少年』 坂月さかな(パイ インターナショナル)
- 第6位 『海が走るエンドロール』 たらちねジョン(秋田書店)
- 第7位 『ブスなんて言わないで』 とあるアラ子(講談社)
- 第8位 『太陽よりも眩しい星』 河原和音(集英社)
- 第9位 『多聞くん今どっち!?』 師走ゆき(白泉社)
- 第10位 『わたしたちは無痛恋愛がしたい ~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~』 瀧波ユカリ(講談社)
- 10位以下の作品リスト
- 『このマンガがすごい!2023』ランキングの《オトコ編》の感想
- まとめ
『このマンガがすごい!2023』 オンナ編 ランキング一覧
『このマンガがすごい!2023』ランキング(オンナ編)のTOP10は以下の通り。
- 『天幕のジャードゥーガル』
- 『ジーンブライド』
- 『まじめな会社員』
- 『女の子がいる場所は』
- 『星旅少年』
- 『海が走るエンドロール』
- 『ブスなんて言わないで』
- 『太陽よりも眩しい星』
- 『多聞くん今どっち!?』
- 『わたしたちは無痛恋愛がしたい ~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~』
ちなみに、『このマンガがすごい!2023』の公式ページはこちらです。
『このマンガがすごい!2023』 オンナ編 第1巻レビュー
『このマンガがすごい!2023』ランキングのオンナ編の第1巻を読んで、その感想をまとめました。
第1位 『天幕のジャードゥーガル』 トマトスープ(秋田書店)
どうして勉強をしないといけないのか?
子供のころ、誰もが一度は疑問に思ったことがあるはず。
その問いに対して、学者一家の息子・ムハンマド坊っちゃんは次のように答える。
でも勉強して賢くなれば
『天幕のジャードゥーガル 1』トマトスープ
どんなに困ったことが起きたって
何をすれば一番いいかわかるんだ
それは絶対に悪いことじゃない
時は13世紀。舞台はイラン東部からモンゴル帝国。
ムハンマド坊っちゃんと出会い、教養を身に着けた奴隷の少女・シタラに待ち受けていたのは、突然の別れと死、そして怒りと決意。
勉強が好きな人にも、勉強が苦手だった人にもぜひ読んでいただきたい作品です。
第2位 『ジーンブライド』 高野ひと深(祥伝社)
表紙を見て「この雰囲気、どこかで見たような……」と思っていたら、『私の少年』の作者・高野ひと深先生の作品だった。
日々の生活の中で、セクハラトークに巻き込まれたり、変態野郎に出くわしたりと、女性にとっての悩ましい問題にうんざりしていた主人公・諫早依知(30)。
彼女が次に遭遇したのは、学生時代の同級生・正木蒔人だった。
依知は、蒔人の独特な行動や考え方に振り回されながらも、なんやかんやで、ふたりバランスの取れた関係が築かれていく。
『このマンガがすごい!2023』の紹介には〈爆発する怒りの感情が原動力のジェンダーSF〉とあったが、1巻の最後の最後でようやくSF要素が登場。
これは続きが気になる……!
第3位 『まじめな会社員』 冬野梅子(講談社)
痛っ、イタタタタ……。
あまりに物語がリアルすぎて、読んでいて心臓が痛くなる。
主人公は、菊池あみ子、30歳。契約社員。彼氏は5年いない。
どこにでもいそうな平凡な会社員。まじめに業務をこなし、恋愛もマッチングアプリで奮闘中。コミュ力も良好。少数ながらも、親しい友人もいる。それなのに、、。
こんなにまじめに頑張っている人でも幸せになれないの……?社会厳しすぎん?人生厳しすぎん?未来真っ暗すぎん?
そんな生き地獄を、あみ子は紆余曲折ありながらも進んでいく。孤独な日々を、今日も生きていく。
そんな彼女の姿を見ていると、少しだけ勇気をもらえた。
第4位 『女の子がいる場所は』 やまじえびね(KADOKAWA)
面白い。けど、その一言で済ませてはいけない、そんな作品。
「女性差別」という難しいテーマが、サウジアラビア、モロッコ、インド、日本、そしてアフガニスタンに住む10歳の少女の純粋な目を通して描かれている。
扱っているテーマは重たい。でも、読後はどこか前向きな気分になれる。
すべてがそろった状態を幸せと呼ぶなら
『女の子がいる場所は』
人はいつまでたっても幸せになれないよ
『女の子がいる場所は』
このタイトルに続く言葉を想像しながら、手にとって読んでみてほしい。
第5位 『星旅少年』 坂月さかな(パイ インターナショナル)
Good Midnight!
という挨拶から始まるこの物語の世界観に、読んでいてとても癒される。
ジャンルはSFファンタジー。
とある宇宙で、「トビアスの木」と呼ばれる植物(?)の毒によって人々は眠りにつき、住民のほとんどが眠ってしまった星は「まどろみの星」と呼ばれた。
星旅人・登録ナンバー303は「まどろみの星」を訪ねて、そこに残された文化を記録・保存するのが仕事だった。
そこに確かにあったものを
『星旅少年 1』
記録するのが僕の仕事なので
宇宙と星と、旅人と。人の記憶と、過去と今。
捉えどころのない性格の303の抱える秘密や、トビアスの木の謎。物語はファンタジーで、雰囲気がふわふわしていて癒されるのに、所々で不穏な影が見え隠れする。
夜、眠りにつく前に読むのがおすすめの漫画です。
第6位 『海が走るエンドロール』 たらちねジョン(秋田書店)
自分好みの漫画を見つけたときは、いつも鳥肌が立つ。
この漫画もそうだった。
「うみ子さんさぁ 映画作りたい側なんじゃないの?」
『海が走るエンドロール 1』 たらちねジョン
65歳のおばあちゃん(うみ子さん)が、映画を撮るために美大の映像科に入学するなんてストーリー、素敵すぎる。
「貴女は映画が好きなのではなく 映画を観てる人が好きなんですね」
『海が走るエンドロール 1』 たらちねジョン
自分にとって本当にやりたいことがあるとき、それを人に説明するのは、正直面倒くさい。
自分の本当の気持ちを隠して、建前で乗り切りたいときもある。
それでも。
「…映画を撮りたいです」
『海が走るエンドロール 1』 たらちねジョン
その一言が、二つの海を引き合わせ、映画という未知の世界を進んでいく船となる。
『海が走るエンドロール』第1話は、たらちねジョン先生のこちらのツイートから読むことができます。
第7位 『ブスなんて言わないで』 とあるアラ子(講談社)
プラスサイズモデル、ボディポジティブ、ボディアクティビスト……。
いろんな言葉が登場して、いかに自分が無知であるかを思い知る。
学生時代に「ブス」と言われていじめられていた主人公・知子は、当時のいじめの首謀者であり、現在は美容研究家として活動している美人の同級生・梨花に復讐することを決意する。
勤めていた会社を辞め、ナイフを買い、梨花の会社に突撃する。
美人にルッキズムの何がわかるって言うんだよ
『ブスなんて言わないで 1』
しかし、事態は予想外の方向へと進んでいくことに。
「人は見た目が9割」という言葉もあるように、日常において人を外見で判断していることは否めない。
たとえ美人でもイケメンでも、自分の容姿について悩むこともある。
裏表紙にある〈反ルッキズム×シスターフッドの物語!〉という文句の通り、女性たちと社会との熱い闘いが、今ここに始まろうとしている。
第8位 『太陽よりも眩しい星』 河原和音(集英社)
こういうありふれた青春の、感情の動きが細やかな恋愛物語は、読んでいて安心する。
背の高い女の子・岩田朔英は、小学校からの幼馴染の神城光輝に片思いしていた。
昔は、朔英が神城を守る立場だったのに、中学生にもなると身長も逆転し、神代は女子にもモテる人気者になっていた。
そんな二人の関係が、中学最後の体育祭をきっかけに、徐々に縮まっていく。そして舞台は高校へ。
朔英の感情の機微が丁寧にすくい取られて、それがどんな気持ちであっても、ちゃんと向き合いながら一歩ずつ踏み出して、物語が進んでいく。
どこにでもありそうで、でもそこにしかない、そういう物語。
『太陽よりも眩しい星』
月と太陽が一直線に並ぶ日が来るまで、温かい目で見守っていきたい。
第9位 『多聞くん今どっち!?』 師走ゆき(白泉社)
家事代行バイトをしているヒロイン・木下うたげが代理で行くことになったのが、まさかの最愛の推し・福原多聞の家だった。
〈推しに貢ぐ金こさえに来たら推しの家だった件〉
しかし、アイドルとしての多聞くんは”セクシー&ワイルド”なのに、その本性は”メンヘラ陰キャ”のジメ原さんだった。それからなんやかんやで、うたげは家事代行として今後も家に通うことに。
自分だけが知っている推しの秘密。うたげは、アイドルとしての多聞くんと、陰キャのジメ原さんそれぞれの魅力に負けそうになりながらも、ファンとして一線を引こうとするが……。
本作品で、多聞くんを褒めちぎる言葉が出てくるが、そのワードセンスが素晴らしい!
以下、第1巻に登場した名言の一例である。
『多聞くん今どっち!? 1 』
- 【見るタイプの美容液】
- あれ顔にプラズマ●ラスター搭載されてる
- セクハラとセクシー&ワイルドを一緒にするな
世界平和と書いて世界平和と読むんだよ
推しとファンの恋物語。果たしてうたげはファンのままでいられるのか!?
ところで、推しとのお忍びデートは家事に入るっけ……?笑
第10位 『わたしたちは無痛恋愛がしたい ~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~』 瀧波ユカリ(講談社)
まず「無痛恋愛」というパワーワードに惹かれた。
「無痛恋愛」とは、文字通りの意味で「痛みを伴わない恋愛」のこと。
無痛恋愛 それは…
『わたしたちは無痛恋愛がしたい ~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~ 1』
友達みたいな…
穏やかで 私が私でいられる
でもセックスもちゃんとする
そんな恋愛を指すらしい。
主人公・みなみは、フォロワー4人の鍵垢で、日常の愚痴を吐き出すのが日課。
大学時代の友人・由仁は、みなみの数少ないフォロワーの1人で、日々の出来事や悩みを共有する仲にある。
他には、交際はしていないが、みなみと関係のある顔のいいクズ(星屑男子)や、みなみが駅で男に肩をぶつけられたときに出会った対応が紳士のフェミおじさんが登場する。
サブタイトルに掲げられているだけあって、鍵垢女子、星屑男子、フェミおじさん(は、まだ詳細不明だけど)の思考回路や、「クズあるある」みたいなのもあって、とても深く共感ができる。
フェミおじさんがどういう経緯でフェミおじさんになったのか、あの絶妙な巨大魚ポーズの体勢はどこで習得したのか、非常に気になる……笑
10位以下の作品リスト
『このマンガがすごい!2023』《オンナ編》の10位以下の作品は、以下のリストのとおりです。
- 『わたしたちは無痛恋愛がしたい ~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~』
- 『うるわしの宵の月』
- 『花四段といっしょ』
- 『恋じゃねえから』
- 『あの子の子ども』
- 『マダムたちのルームシェア』(同15位)
- 『ややこしい蜜柑たち』(同15位)
- 『ふつつかな悪女ではございますが~雛宮蝶鼠とりかえ伝~』
- 『ファッション!!』(同18位)
- 『真綿の檻』(同18位)
- 『初恋、ざらり』
『このマンガがすごい!2023』ランキングの《オトコ編》の感想
下の記事は、「オトコ編」ランキングTOP10の第1巻を読んだ感想をまとめたものです。ご参考までに。
まとめ
今回の記事では、『このマンガがすごい!2023』ランキング(オンナ編)の第1巻を読み、その感想をまとめました。
どれも読みごたえあった!
今回初めて『このマンガがすごい!2023』のオンナ編トップ10を読んでみましたが、思っていたよりも恋愛漫画が少ないというのが意外でした。
一方で、ジェンダーや男女格差などの社会的な問題を題材としたものが多く、実体験かのようなリアルな内容が多かったので、とても勉強になりました。
『このマンガがすごい!2023』本誌のオンナ編 総評では、下のように書かれていました。
今年のランキングにはフェミニズム、ルッキズム、ハラスメントなどの問題に果敢に切り込む作品が並んだが、いずれも主人公を単純に〈正義〉としてはいない。登場人物が〈今〉を生きる、その感情と思考が物語をリードしていく印象だ。
『このマンガがすごい!2023』オンナ編ランキング総評
たしかに、どの主人公も自分の考えや信条のもとに行動し、その結果として物語が前に進んでいた。誰一人として、現状に屈しているヒロインはいなかった。
楽しむための漫画だけではなく、自分の考えを深めることができる漫画を読む良い機会になりました。
もし気になる作品があったら、ぜひ手に取って読んでみてください!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!